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 投稿者:魔ッちゃん  投稿日:2006年 4月16日(日)16時16分17秒
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   ある晩、のび太が目を覚ますと、大勢の人間が壁から出てきて、壁の中へと消えていった。驚いたのび太は、次の日ドラえもんにその事を伝える。しかし、ドラえもんはのび太の話をポーッとして、まるで聞かない。

 最近、のび太の家では変なことばかりが起こる。家の壁に落書きがいっぱいあったり、パパがマージャン大会に優勝して取ったライターなどがなくなったり…。
「とうとう、このへんにもあらわれたか。」
とつぶやくドラえもん。

 そんな中、ドラえもんの横の壁から子供が出てきて、ドラやきをヒョイと取り、子供は再び壁の中へ消えていった。
それを見てのび太は驚き、
「お、おいっ、み、み、見たかいまの。」
ドラえもんは相変わらずボンヤリした表情で
「あ、うん……。」
「あ、うん?言うことはそれだけ?」
と困惑するのび太。
「のび太くん!!」
ドラえもんが突然叫んだ。
「もしも、もしもぼくがいなくなっても、きみひとりで、やっていけるかい?」
「そんなこと、考えられないね。きみがいなくちゃ、ぼくはだめなんだ。」
とのび太。
「なさけないこと言うなよ。じつは…」
と、ドラえもんが話を切り出したその時、また壁の中から何人かの人間が出てきた。
「まっぴるまからこんなとこへ。ひと目につかないように回るのがきそくだぞ!」
とドラえもん。すると、一人の男が
「こそこそかくれながらの観光じゃ、お客さんがまんぞくしなくなってね。」
と言った。状況が掴めないのび太は
「だれだい、この人。」
と言うと、
「しつれいしました。私はこういう者で。」先頭の男が名刺を差し出した。

≪フジヤマ時間旅行株式会社/一級ガイド カバキチ・カバタ≫

 つまりこの人達は、未来の世界から昔の世界を見物するために来た時間観光旅行の人らしい。

「みなさま、これが古代日本の民家です。ご自由にごらんください。」
とカバタが言うと、ドヤドヤと観光客がやってきて、のび太の家を荒らしはじめた。
「めいわくだ!かえってよ!」
と叫ぶドラえもんとのび太。しかし、観光客はのび太の家に記念の落書きをしたり、パパの服をお金で勝手に持ち帰ったり、のび太の部屋のノートを勝手に見たり…と迷惑三昧。ドラえもんとのび太は、家から観光客一行をおっぱらおうとするが、観光客は四次元移動で動いているので壁の中に逃げ込んで上手く追っぱらえない。

 すると、そこに一人のピストルをもった男が混じっていた。殺し屋ジャックという男で、全世界指名手配犯らしい。
「追いつめられ、いばしょがなくなったので昔の世界へ逃げてきたのだ。こうなったら、きさまらをみな殺しに……」
とジャックが言った瞬間、タイムパトロールがやってきて、バズン!と銃でこの男をやっつけた。

 そのうち観光客は帰り、のび太の家は静かになった。
「やっとしずかになったよ。」
とドラえもん。
「時間観光旅行なんてめいわくだァ。なんとかしろ。」
とのび太。その時、セワシがのび太の机の中から来て、
「それはもう心配いらないよ。」
と言う。

 セワシの話によると、「時間旅行きせい法」という法律が未来の世界で決まったらしい。さっきの観光客のようにタイムマシンで旅行する人がふえてきて、昔の人に迷惑をかけることが多くなったので、今後一切の時間旅行が禁止されることになったのだ。それを知ったのび太は不安そうに言った。
「すると……。ドラえもんは!?」
「もちろん帰らなくちゃいけない。」とセワシが答えた。
「そ、そんな!!いやだ!ぼくは帰さないぞ!!」
と叫ぶのび太。それに対し、ドラえもんは
「男だろ!これからはひとりでやってくんだ。きみならやれる!!」
と励ました。ドラえもんはのび太に
「僕ぼくが来たころからみると、ずっとましになっているからね。」
と言い、セワシは
「そう、元気になったし、からだも強くなった。頭もすこーしよくなった。」とねぎらいの言葉をかけた。

 その時、のび太の机の引き出しからプオー、プオーという音が鳴り響いた。引き上げの合図だ。
「いそがないと。」
とセワシはドラえもんに言った。
「じゃ…。」
とガッチリ握手するドラえもんとのび太。

 ドラえもんはセワシに連れられ、机の引き出しの中に入ると泣き叫んだ。
「いやだァ。のび太くんと別れるのいやだあ。」
「ドラえもん!!」

 ドラえもんとセワシは、机の引き出しの中に消えていった。のび太は机の引き出しを眺めながら、
「ドラえもん…。」
と、呟いた。

 ドラえもんが帰った後、のび太は思いふけった。
「つくえの引き出しは、ただの引き出しにもどりました。でも……、ぼくは開けるたびにドラえもんを思い出すのです。」

 「ドラえもん!いつものようになんか出してちょちょっとたすけてよ。」
と言いながら、のび太はいつもの調子で家に帰ってきた。のび太が部屋に入ろうとすると、話し声が聞こえてきた。
「どうしても?」
「どうしてもだ!」
「でもあとが心配で……」
「それがいけないんだよ。」
のび太が部屋に入ると、そこにはドラえもんだけでなくセワシもいた。

 セワシはのび太に言う。
「じつはね、そろそろドラえもんを……」
「まった!ボクがあとでいう。」
とセワシの言葉をさえぎるドラえもん。 セワシは
「きっとだぜ。」
というセリフを残して、タイムマシンで未来へ帰っていった。

 妙にしょんぼりした表情のドラえもん。のび太は
「どうしたんだい」
と一応は気遣った。
「の、のび太くん!!じ、じつは……」
と言いかけたところで、今度はのび太がいつもの調子で
「友だちと明日サイクリングに行くことになったんだ。実は僕自転車にのれないの。何とかしてよ。」
と甘えると、ドラえもんは大声で怒鳴りだした。
「どうにもならないね!どうしてそう人にばかりたよるんだっ!ぐずぐずいってるひまに練習したらどうだっ!!」

 びっくりして、慌てて部屋を飛び出すのび太。
「へんなの。ばかにきげんがわるいや。だいじょうぶ。いざとなればきっとなんとかしてくれるさ。いつもそうなんだ。」
そう呟くのび太を陰で見ていたドラえもんは
「まるっきりぼくにたよってる。やっぱりこれじゃだめだ。」
とのび太に対して不安な気持ちを抱く。
「よし!!心を鬼にしていおう!!」

 そう決意したドラえもんはのび太のところへ走るが、のび太も同時にドラやきを持ってドラえもんの所へ走り込んできた。ドラえもんの表情は一転して
「ドラやき!!」
とよだれを垂らす。 のび太は
「きみ、すきだろ。ぼくのぶんも食べていいよ。」
と言った。 ドラえもんは
「わるいなあ」
と言葉を返した。 のび太は
「いやいや、ふだんおせわになっているからおやつくらい。もし、この世にきみがいなかったらと思うとぞっとするよ。とてもぼくなんか生きていけないな。」
と言った。それを聞き
「と、とても言えない、みらいの世界へ帰るなんて…。」
と陰で涙を流すドラえもん。ドラえもんが傍にいると、のび太は頼り癖がついて駄目な人間になってしまう。それで、ドラえもんは未来の世界へ帰ることになったのだ。

 そこでドラえもんはセワシと相談して、ある策略を練る。ドラえもんが壊れそうな振りをして、修理のために未来の世界へ帰るという事にすれば、のび太も納得するのではないかと。早速、
「くるしい、死にそうだあ!!」
と壊れた振りをするドラえもん。それを見たのび太は
「ドラえもん、こわれちゃいやだ。」
とドラえもんに泣き付く。そしてセワシに
「みらいへつれてってなんとかなおしてやって!!」
とお願いした。セワシは
「よしそうしよう」
と言った。 そこでドラえもんは
「だけどぼくがいっちゃったらこまるんじゃない?」
と言うと、のび太は
「こまるにきまってらい、でもきみが元気になるためなら、どんながまんでもするよ。」
と言った。

 のび太の言葉を聞いたドラえもんは感激で大泣きし、のび太に
「こわれそうというのはうそなんだ」
と打ち明ける。すると、のび太は
「ひどいやみらいへ帰っちゃうなんて!!しかもうそまでついて。」
と言った。すかさずドラえもんは
「のび太くんはボクにたよるくせがついちゃったろ」
と言い返した。セワシも
「このままじゃ、ひとりではなんにもできないだめな人間になりそうで心配なんだ。自分の力でなんでもできる強い人になってほしいんだよ。」
と言った。

 するとのび太は、
「わかった。ほんとにそのとおりだと思う。やってみるよ。ぼくひとりで、自信はないけどがんばるよ。」
とドラえもんに言った。

のび太は
「きみのことわすれないよ。」
とドラえもんに言った。
「ぼ、ぼくだって……ククク。」
と、泣きながらドラえもん。セワシは
「さようならあ。」
と別れ際に言った。そしてドラえもんとセワシは未来の世界へ帰っていった。

 ドラえもんが帰った後、のび太は自転車の練習をはじめる。フラフラした運転に何度も転び、アザだらけの姿にのび太のママは
「むりしないでやめたら?」
と言うが、のび太は言った。
「だ、だいじょうぶ……イテテテ。ドラえもんとやくそくしたんだ。」

 その様子を未来の世界から見守り、応援するドラえもんとセワシ。
「がんばれ、がんばれ!タイムテレビでおうえんしてるぞ!!」
 ジャイアンに追われ、家に逃げ帰ってきたのび太。のび太はドラえもんに
「あれ貸してよ。ほら、いつかつかったやつ。けんかに強くなるの。」
しかし、ドラえもんは冷たく言った。
「ひとりでできないけんかならするな!」

 ドラえもんの表情は、妙に沈んでいる。
「おいどうしたんだよドラえもん。」
と、のび太が聞くとドラえもんは打ち明けた。
「こないだから…言おう言おうと思ってたが…」
「帰る?未来の世界へ!」
 明日の朝、ドラえもんは未来の世界へ帰るらしい。のび太は驚き
「なんとかして」
と泣きつくが、ママは
「ドラちゃんにはドラちゃんの都合があるのよ。わがまま言わないで」
と言った。パパも 「人にたよってばかりいてはいつまでたっても一人前にはなれんぞ。男らしくあきらめろ。」と言った。

 その日の夜は、家族みんなでドラえもんのお別れ会をした。そしてその晩、のび太はドラえもんといっしょの布団に入って寝る事にしたが、二人ともどうしても眠れない。そこで二人は
「朝までお話しよう」
と"眠らなくても疲れない薬"を飲み、いっしょに散歩へ出かけた。

 「お月さまがきれいだ。」
ドラえもんは言う。
「のび太くん…本当にだいじょうぶかい?」
「何が?」
「できることなら…帰りたくないんだ。きみのことが心配で心配で…。ひとりで宿題やれる?ジャイアンやスネ夫に意地悪されてもやり返してやれる?」
のび太は答えた。
「ばかにすんな!ひとりでちゃんとやれるよ。約束する!」
その言葉を聞き、ホロリとするドラえもん。
「ちょ、ちょっとそのへんを散歩してくる…。」と言って走り去った。
「涙を見せたくなかったんだな。いいやつだなあ。」

 そしてのび太は、いつもの空き地の土管に腰掛けた。すると、そこに寝ぼけながら散歩をするジャイアンを見つけた。その時、ジャイアンはハッと目を覚ました。
「だれだっ。そこでにやにやしてるのは!なんだのび太か。おれが寝ぼけてるところをよくも見たな。許せねえ!」
ジャイアンはのび太の胸を掴み、のび太は思わず叫んだ。
「わあっ、ドラ…」

 しかし、ここでドラえもんを呼ぶわけにはいかず、のび太は口に手を当てた。のび太は言った。
「けんかならドラえもんぬきでやろう」
ジャイアンはボカッと一発、のび太を殴り飛ばした。

 一方、ドラえもんは、助けを呼ばれたような気がしてならない。心配になったドラえもんは、町中を回ってのび太を探すが、見つからない。先に帰ったのかと思い家に帰ってみたが、のび太はいない。

 空き地では、ジャイアンはのび太を殴り続けていた。ボロボロになってのびてしまったのび太。
「どんなもんだい。二度とおれにさからうな。」
しかし、のび太はしつこくと起きあがり、ジャイアンに言った。
「待て!まだ負けないぞ。」
「なんだおまえ。まだなぐられたりないのか。」
「何を。勝負はこれからだ。」
さらにガツンと殴られるのび太。

 ドラえもんは、家でのび太の帰りを待っていたが、一時間経っても帰らない。
「どこで何してんだ。最後の晩まで人に心配かけて。」

 さらにジャイアンは殴り続け、のび太は倒れる。ジャイアンは息を切らしながら言った。
「ふう、ふう。これでこりたか。何度やっても同じことだぞ。はあ、はあ、いいかげんにあきらめろ。」
帰ろうとするジャイアンの足にしがみついて言った。
「ぼくだけの力できみに勝たないと…ドラえもんが…安心して…帰れないんだ!」
「知ったことか!」
更にのび太を殴るジャイアン。

 その時、ドラえもんは、
「ただごとじゃないよ、こりゃ。」
と不安になり、再び外へのび太を探しに行った。すると空き地に、ボロボロになりながらジャイアンと戦っているのび太いた。のび太はジャイアンをしつこくつねっている。
「いてて、やめろってば。悪かったおれの負けだ。許せ。」
ジャイアンは逃げ帰った。

  のび太は全身傷だらけの姿でドラえもんに言う。
「勝ったよ、ぼく。」
ドラえもんの抱かれながらのび太は言った。
「見たろ、ドラえもん。勝ったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろドラえもん。」

 家に帰り、布団に入るのび太。そしてその寝顔を、涙を流しながら見つめるドラえもん。
翌朝、のび太が起きると、ドラえもんは、いなかった。
ママはのび太に
「ドラちゃんは帰ったの?」と聞いた。
「うん。」
と、のび太は一言答えた。

 ガランとしている自分の部屋で独り、座りながらのび太は思いふける。
「ドラえもん、きみが帰ったら部屋ががらんとしちゃったよ。でも……すぐになれると思う。だから…心配するなよドラえもん。」
 

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